いつも冷えがあるのですが、妊娠しづらいでしょうか?別府 正志日本産婦人学会専門医、東京医科歯科大学卒業 同大・医学部付属病院産婦人科・分娩部病棟医長を経て、 現在、同大・医歯学教育システムセンター講師遼寧中医大学付属日本中医薬学院卒 日本東洋医学会 指導医・専門医 日本中医学会 評議員

「腎」と冷え

冷えには大きく分けると2つのタイプがあります。ひとつは血行が悪いために起こる冷え、もうひとつのタイプは「腎」の機能が低下して起こる冷えです。

「腎」は生殖機能や性機能と深い関係があります。よく「冷えると妊娠しづらい」というのは「腎」の機能低下が関係している場合が多いためです。

手足だけでなく、足腰も冷える、極端な寒がり、冷たいものを嫌うなどの特徴があります。

冷たい食べものは体を内側から冷やします。

氷水に手をつけているとしびれて血行が悪くなるように、氷が入っているものや冷たいもので胃を冷やしてしまうと、そのそばにある子宮はまるで氷枕をしているような状態になり、血行も悪くなりがちになります。特に、冷える冬は、薄着を避け、何でも温めて食べるようにした方がよいでしょう。

また、薄着ですとさらに体を冷やしてしまうのでできるだけ温かい格好をしましょう。

赤ちゃんが欲しいひとは冷えちゃダメ

漢方では、体が冷えていると子宮の血流も悪くなって、赤ちゃんのベッドとなる内膜を、温かく柔らかい状態に保つことができなくなると考えます。そのため、受精卵が内膜に着床しづらくなり、不妊という問題が起こりやすくなるのです。

また、冷えによって卵胞の成長にも問題が起こり低体温が長引くようになります。


このような場合、排卵がスムーズに起こらない、黄体ホルモンの分泌が悪いといった問題が起こるため、そちらの方に気を取られがちです。


しかし、漢方では、排卵期や黄体期の問題も、「腎」の機能低下によって起こる卵胞期の問題ととられることが多く、

卵胞期を中心に対処していくと良い事が多いです。

根菜や温性食品をとろう

体を温かい状態に保つためには、温かいものを食べるのが基本です。

そこに漢方の知恵をプラスして、体を温める作用がある「温性」の食べ物を、積極的にとるようにするとよいでしょう。

野菜なら、にんじん、玉ねぎ、いも類などの根菜類をたっぷりと。ねぎ、しょうが、にんにく、スパイス類なども体を温めますが、発散作用があるため、取りすぎないよう注意します。このほか、羊肉、鶏肉、エビなども、体を芯から温める作用があるので上手に利用しましょう。

「漢方」と「不妊」についてのお話を伺いたいのですが…。

不妊の原因は様々ですが、漢方は妊娠するお薬というよりはむしろ妊娠しやすくする体づくりというような理解が正しいかもしれません。「腎」の不足(腎虚(じんきょ))によって起こることが多いですが、「肝」や「脾」の異常など患者さんによって様々です。


西洋医学(ART:高度生殖補助医療)をやりながら通ってこられる方も多いです。


西洋薬は作用が強いので、漢方的にどういう薬に相当するかということを捉えて、

それに合わせて漢方も選ぶ必要があると考えます。

体質によって処方は様々ですので、専門家がきちんと判断して漢方薬を選ぶ必要があります。

漢方薬のどんなところがおすすめですか?

東洋医学というのはまずその人がどのような「歪み」を持っているかということを捉えます。それぞれの病気や症状などはその「歪み」がもたらしていると考え、それぞれの細かい症状に対処するのではなく、全体的な大きな「歪み」を治すというような治療をします。


例えば、「冷え」が原因で起きている月経痛であれば、西洋医学では痛み止めを使用しますが、漢方であれば温める治療をすることによって特に痛み止めを使わなくても痛みがひく場合があります。また、「冷え」が原因で頭が痛いとか様々な症状が起きている場合、同時にそちらも治ってしまう事があります。これを「異病(いびょう)同治(どうち)」(異なった病気に同じ治療を行うこと)と言います。

東洋医学は、病の本質的なところを治していくので、本人の気が付いていないところまで改善していける可能性があり、総合的に健康に向かっていくというところがおすすめです。このように、対症療法だけでなくオーダーメード的な薬の使い方ができるところに非常に魅力があります。

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